がんばりました

演奏が終わって、外に出ると満月が明るかった。
今日は銀座のヤマハサロンでブラームスを演奏した。
10分足らずの曲、スケルッツォ Op.4。
ブラームスの最初に出版された曲の一つである。
18歳のブラームスは作曲技法の習得に情熱があった。
多くの作曲家、いろいろな作品からエッセンスを取り出して
自分の糧とし、数々の作品を生み出して行った。
あぁ、そのときはどんなに嬉しかったであろうか。
ああもできる、こうもできると、
ひらめきが輝いていたに違いない。
しかし、リストにこの曲を見せに行ったとき、
リストの取り巻き連中からは
あまり芳しい評価は受けなかった。
ショパンに似ているとか、
対位法の扱いとかについて言われたらしい。
確かにこの曲は、ショパンのスケルツォのような
冒頭である。
けれども、私はまだ髭も生えていない若い彼の
(20歳のときの肖像画が残っている)
キラキラとした輝きに満ちたオーラに
愛情を持たずにはいられない。

ところで、
今日の挑戦は、
本当に肝に届く音を出してみたい!
ということ。
演奏技術のことではない。
音楽を演奏する姿勢に挑戦をしていた。
心のどこかにある作為や体面、
あるいは無意識の癖によって
音楽が受け取れなくなっていないだろうか?
コンサートをする際には、もちろん、
この点には精進しているつもりだが、
演奏会が成立することも考えざるを得ない。
きょうは仕事と言うほどではない研究会、
又は発表会と言った方がいいような演奏会だから、
かえっていつもより爆発的に思い切った挑戦ができる。

新しい挑戦は危険を伴う。
演奏の途中で破綻するかもしれない。
しかも、とんだことに、演奏曲の楽譜をすっかり忘れて
家に置いてきてしまった!
破綻しても助け舟も無い。
(後で考えたら銀座ヤマハですから
楽譜は買うこともできたのですョ、トホホ)
風邪も引いていて、体調は万全ではない。
心の中では、
練習どおりに弾けば、安全に、無難に
最後まで滞りなく弾けるという
自信に満ちた誘惑と、
せっかくのこのチャンス、
どこまで自分を新しくさせて、
研ぎ済ませられるのか挑戦するべし
との声が、葛藤を繰り返していた。

………………………………♪………*

結果?結果を聴きたいですか?
腹をくくって挑戦したに
決まっているじゃぁないですか。
こんな程度の私ですけど、音楽家として
「瞬間」をつかまえる仕事をしているのですもの。
その瞬間、ズシーンとブラームスの体温が
体中を駆け巡り、破綻するかと思いましたよ。
けれども、ブラームスの魂と、
そこに集った人々の期待が応援してくれて、
いい音楽にしてくれました。

海の向こうの韓国では、
武久氏とアンサンブルの面々が
ソウルからデジョンに移動して演奏しています。
連日のコンサート、奏者もスタッフも
大変なことだろうと思います。
がんばってね。








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